2004.06.29
ブナ植林地の地質と現況調査について

各 位 次長須藤雄樹さま、場長奥寺敏一さま 

標記について下記のとおり実施したので報告いたします。
日時:6月24日(木)10:30〜14:00
参加:松山  力、蝦名  憲、小山内孝、小笠原ミツエ、棟方啓爾
写真:関連報告末尾にURL記載。

■ 地質関連
●報告者:青森県地学教育研究会前副会長・日本地質学会会員 松山  力

○24日の水源涵養林の地質の全体像は、露頭に乏しく道脇の表土したの
安定的(攪乱のない)な土・地層を見られなかったことは残念でしたが、それで
もおよその状態の検討はつけられ、現場を見てよかったと思います。
 やや専門的な言葉を用いるのは恐縮ですが、先に紹介しました表層地質
図に記載されておりますように、涵養林一帯の地質は、基本的には田代平
カルデラ(八甲田カルデラという人もいます)に関係する火山活動で、火砕流と
して流下した軽石混じりの火山灰で構成される凝灰岩もしくは溶結凝灰岩
が土台となっているようです。地表直下は、その表層が風化していわゆるロー
ム化した部分、あるいは火砕流堆積物(凝灰岩・溶結凝灰岩)の堆積後に
大雨などで洗われ流されたものが再堆積した部分が風化してローム化した部
分、急斜面部ではこれらの崩落土となっており、最上層は腐植土化して黒土
となったようです。
 ところが、腐植土層形成後に軽石粒(粒径数mm前後)混じり火山灰の降
下があり、それが洗い流されて残されていない部分や、そのまま残っている部
分があるように見ました。この火山灰は、縄文時代に入ってからの降下で、酸
ヶ湯の地獄沼付近を除けば八甲田の噴出とは考えにくく、現在の知見では、
十和田火山噴出物と見るほかありません。縄文時代に入ってから十和田火
山から噴出し広い範囲に降下した火山灰層や軽石層で北八甲田北側に
分布する火山灰層は、弥生時代初期に一層(十和田b降下火山灰層)、
平安時代に一層(十和田a降下火山灰層)で、どちらも三沢高校の調査で
八甲田湿原に確認されております。そのどちらか、あるいは双方が涵養林一
帯にあるものと思います。この確認のためには、土層が安定的な場所を、数
十cm程度掘り下げるしかありませんが、24日にできませんでしたので、必要
なら後日水道部の了解を得てやれればと思います。黒味を帯びた腐食土層
が特殊な条件でできたものなら旧石器時代末ころのものの可能性がないわけ
でもないので、問題の火山灰層が12000〜13000年前のものの可能性
もわずかな確率であります。そのことを地質仲間で検討してみます。
 なお、一部には腐食土層の上にロームなどがのっていました。流入か盛土か
は不明でした。
 ブナ苗の活着と土質との関連ですが、枯れ苗の集中する部分で苗を植える
深さまでの部分から掘りあげられた土を見ると、乾けば浅黄橙色の砂粒大〜
粒径数mmの軽石粒が多いものです。素人目では、乾燥しやすい土質で活
着がよくないのではと思ったのですが、いかがでしょうか。枯れ苗の周りと、活着
がよい苗の周りを掘って見ればよかったと反省しておりますが、枯れ苗の集中
部と炭焼き跡の穴の周りで見た限りでは相関があると思いました。
 なお、炭焼きの穴底にも苗をうえつけておるようですが、穴を保存するのでな
ければ埋め立てて植え付けすべきですし、保存するのならそこは植え付けしな
い方がよいのではと思いましたが、素人目かもしれません。
 実験林ならば、すでに植え付けた場所の活着の度合いに応じて、何カ所か
土層を数十cmほど切り割って、ローム質層と腐植土層・軽石層などの厚さを
調べ、また植え付け苗埴土底の深さとの関係を研究するべきと思います。
 多分、素人目では、根が成長してしまえば軽石層は大きな不具合の要因
にはならないと思います。
 以上が報告です。必要とあれば、手をつけていない場所を伐採してのブナ
植林には基本的に反対ですが、実験林の土層の調査には協力したいと思い
ますので、水道部に申し添えて下さい。
○現況写真
  http://thinkaomori.cool.ne.jp/munakata/040624tishitu.html

■ ブナ植栽地の現況
● 報告者:森林インストラクター・元日本林学会会員 棟方啓爾

○ブナ植栽木(当年、14年植栽)
苗木が三年生と二回床替えを経ていること、および仮植地と植栽地が至近
距離にあることが好条件となり、活着は比較的良好である。
ただし、植栽時期が明らかに適期を逸していることから先端部の枯死がみれ
れること、植え付け位置の土壌を考慮せず画一的に植栽しているため比較
的新しい火山灰が多く残っているところでは枯損が目だっており、当年の生
長はほとんど期待できない。
 平成14年植栽でも同様の傾向がみられるが、比較的生長の良いブナ稚
樹にはミツバアケビがからみつき、今後の正常な生育は期待できないと思わ
れる。

○ブナ以外の樹種
1.ミズナラ、ウワミズザクラ、ハウチハカエデとう旺盛に萌芽しており、既に
  ブナ苗木を遙かに凌駕し生長をつづけている。
  ブナは年内の生長はほとんど期待できないので、その差は更に拡大し
  てブナの被圧は一層すすむものと考えられる。
  
2.作業道や植林地内の裸地においては、ミズナラ、ウワミズザク等と実生が
  多量に発生しており、当該地における自然回復力の強さをみせている。
  これに対して、当日の調査区域内では、ブナ稚樹の発生は皆無である。

3.14年植栽地にあっては、オオバクロモジ、マルバマンサク等灌木の繁茂
  も著しく、ブナ植栽木の被圧が著しい。
  また、伐り残されたミズナラ等上木が樹冠を拡げ林床の相対照度が低下
  しており将来更に上木が生長して樹冠を拡げ多場合、照度不測となって
  植栽したブナ苗木は、枯損しないまでも水源林として期待した生長は望め
  ないと思われる。

4.総論として云えることは、潜在植生に期待してブナ植栽を行うことは、地球
  温暖化等々不測の条件も予想されることの他、膨大な人手と経費を浪費
  することはあきらかであり、水源涵養林は、やはりその土地の自然力にゆ
  だねるのが最善であろう。

○現況写真
  http://thinkaomori.cool.ne.jp/munakata/040624genkyou.html

以上


▲ 終 了