(要旨)
森林の水源涵養機能の実態について
岩手大学農学部 石井正典
1.専門分野
演者の専門分野は、「森林水文学」であって、研究歴は40年以上である。
演者の研究課題は、「森林の水源涵養機能の研究」であって、これまでに研究した森林流
域の道県名は、北海道、青森県、岩手県、秋田県、宮城県、山形県、栃木県、群馬県、新潟県、
愛知県、岡山県及び熊本県である。
2.水源涵養養機能
森林の水源涵養機能には、「洪水調節機能」と「渇水緩和機能」の2面がある。
森林の水源涵養機能の研究内容は、@森林による洪水調節機能(洪水を低める程度の解明)と、
A森林による渇水緩和機能(地下水を多くする程度の解明)である。
ただし、洪水調節機能が優れた林分が渇水緩和機能も優れるとは限らないので、別個に
解明する必要がある。
3.保水力と言う語彙は?
森林水文学での保水力の定義は決まっていない(トランプのジョーカーのようなもの)。
「ブナは保水力が大きく、スギは保水力が小さい。ブナを伐採し、スギを植えたことが
近年の洪水・渇水の原因である。」と巷で言及しているが、森林と洪水・渇水の関わりを研
究している全ての者がその根拠となる科学論文を知らない。すなわち、ブナの保水力に関
する巷での言及は、根も葉もない風評である。
4.広葉樹から針葉樹への林種転換と地下水との関係
演者は、ブナ等の広葉樹を主体とする林分を伐採し、その伐採跡地にカラマツ等の針葉
樹を植栽した流域(岩手県内の安家川)で渇水時流量の増減を調べたが、その結果、ブナ等
の広葉樹の減少が渇水時流量を増やす作用となることを明らかにした。すなわち、ブナを
伐採し、カラマツを植えた行為が地下水を増やしたことで、巷で言及してきた風評とは逆の
結果であった。
5.ブナ伐採と流量との関係
「森と木のある生活」(市川健夫著、白水社発行、164〜165貢)では、白神山地の
秋田県側の流域について言及しているが、その内容は「ブナの伐採で、藤琴川の水量が
3分の1に減少し、また、粕毛川の水量も2分の1に減少した。」と述べている。
それに対して、演者は素波里ダム(粕毛川)の水量・気象・林況資料で流出解析を行っ
たが、ブナ伐採による森林蓄積の減少が水量減少に結びつかないことを確認している。
「システムとしての<森→川→海>」(長崎福三者、農山村文化協会発行、120−122頁)
では、「ブナ原生林の伐採によって山の保水力が低下し、赤石川の水量は大幅に減少
し、・・・」と述べている。
それに対して、演者が白神山地の青森県側の目屋ダム(岩木川)の水量・気象・林況資
料で流出解析を行い、森林蓄積の変動が河川水量の変動に結びつかないことを確認した。
6.演者とNHKとの関わり
NHkは、「ブナは保水力が大きく、スギは保水力が小さい。ブナを伐採し、スギを植え
たことが近年の洪水・渇水の原因である。」と、度々報道してきた。
演者はNHkに対して、その根拠を明らかにするよう迫った。そのやり取りの結果、平成
10年1月28日に至って、盛岡放送局(大瀧重興放送部長、吉沢 信放送部次長)はブナに関
する報道には根拠がないこと、今後は根拠のない報道をしないこと、等、詫びた。
それに対して、根拠がないことは専門家であるからわかっている。ただし、全国の視聴
者はNHkの一連の報道に根拠があると思っているので、そのヤラセを訂正する義務がある
(受信料を取っているので)と伝えたが、今日まで黙殺したままである。その黙殺(平成
10年以降も青森放送局では報道された?)が今日のブナ林信仰の継続となっている。
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